これはある傭兵たちの物語…






昔々、まだ剣と魔法がこの世を支配していた頃、どこか遠いところに動物だけの村があった。
そこの動物は互いに話すことができ、二足歩行もできるようである。

「そろそろごはんよ、二人とも。」

「はい。」
一軒の家の外で豹とサルの子が遊んでいた。

「今日は二人の大好きなステーキよ。たくさん食べてね。」

「ワカッタネ。いただきますねー。」
母親らしき豹の女の人が二人に声をかけ、そして台所へと戻っていった。父親らしきサルも、ステーキを食べている。
ここはポポロクロイスから遠く離れたある村。そこの村では、皆が平和にくらし、そして行きかう商人や旅芸人などのおかげで活気に満ちていた。
そう、あいつが来るまでは…

ある日そいつはやってきた。そいつはいきなりそこの動物たちを捕まえ、手当たり次第に檻にぶち込んだ。
当然、抵抗したものもいた。しかしそれもむなしく、連れて行かれるか、その場に崩れ落ち二度と動かなくなるかのどちらかだった。
全員かたづけるとそいつは部下に、

「毛並みの美しいやつは毛皮をはいでコートを作れ。それ以外は、そうだな…食料としろ。」

といってその場を去った。

そのとき運良く町へ買い物に行っていた豹とサルの兄弟は帰ってきて燃えている街を見て唖然とした。
とりあえず両親を探して家に行こうとすると、かろうじて生きていた一匹の熊にあった。

「君たちの母親は、毛が美しかったから真っ先に連れて行かれた。俺たちがついていながらだ…す、すまない…」

そういうと彼は息絶えた。二人の兄弟は三日三晩泣いた。なぜこんな目にあわなければならないのだ、どうしてこんなことが起こったのかと。
しかし、涙もかれてきた頃、二人の間に今まで感じたことのない感情が芽生えた。母や村のみんなを殺された憎しみや、襲ったやつへの怒りである。
二人は襲ったやつへの復讐を考え始めた。


数日後、ふと通りかかった白い鎧の男を見て、二人は思った。(強そうだ。この人にならえば自分たちの復讐が達成できるかもしれない。)早速二人はその男に剣を習おうとした。
その男も、目的こそ聞かなかったものの快く受け入れた。その男、妙な男で、話すと必ず最後に「〜ござる」とつく。
二人がその男に剣を習って数ヶ月。その男は別れる際にこういった。

「復讐心や邪の念が詰まった剣はいずれ自分の身をほろぼすでござるよ。」

いかにも二人の心の中を知っているような言葉を残し、その男は二人の前から姿を消した。


数ヵ月後…
サルと豹の兄弟は、城の前にいた。そう、あの日村を襲ったやつの居城を突き止めたのである。
赤く、重い扉を壊すと、そこには広いエントランスいっぱいに何かがたくさん横たわっていた。

「これは…一体…?」
その時、

「はっはっは!貴様らがここに何のようだ?ん…そうか、そこの豹はあの村の豹の息子か!」

豹の子はそいつに剣先を向け、叫ぶ。

「今すぐに村の人々をかえしてもらおう!」

「フン、もし生きていても渡すものか…それに、この毛皮のコートはいいぞ…ほら、このとおりにな…」

そういうとそいつはコートをひるがえした。

「!?ま、まさか…その毛皮は…」

「ほう。察しがいいな。いかにも、これはお前たちの母親から作ったコートだ。」

「キサマ…よくも…よくも母さんを!許さん!」

そういうと二人はそいつに襲いかかった。

「フン、貴様らがこのわしを倒そうなど片腹痛いわ…」

そういうとそいつは剣を抜き、ものすごいスピードでサルの少年に襲いかかった。

「まずは貴様からだ!」

そして、鈍い音とともにサルの少年はゆっくり倒れた。豹の少年は駆け寄る。

「大丈夫か?」

「もうすこしやるものと思っていたのだが、つまらんな。貴様もすぐに同じところへ送ってやるわ!!」

そう叫ぶとそいつは豹の少年の背後から襲いかかった。

「くっ…なんの!」

豹の少年はひらりと身をかわし、構えた。

「少しはやるようではないか。では、これはどうかな?」

そういうとそいつは剣に紫の閃光をまとわせ、再び襲いかかった。

「なんの、これしき!くっ…!!」

「甘いな。これで終わりだ!はァァァァァ!!」
そいつが叫ぶと、紫色の閃光は豹の少年を飲み込んだ。

「うわぁぁぁぁぁ!」

豹の少年はその場にゆっくり崩れ落ちた。
                    
「フッ、この程度か。たいしたことはないな。」

「う…くそっ…」

そいつはマントを翻して、倒れているサルの少年に近寄った。

「な…何をするつもりだ!!」

「知れたこと。私に剣を向けた者に、生きているものなど…」

「まさか…!やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「生きているもの、ここにいるでござるよ。」

「!?まさか…」

二人が振り向くと、扉から入る太陽の光の中、あの白い鎧の男が立っていた。

「!?貴様…何故ここに?」

しかしその男はそいつのことを無視して豹の少年に言った。

「拙者がいつかいったとおりでござろう?復讐心がつまった剣は自分を滅ぼす、と。」

「しかし、やつは母さんの仇…今ここで討たなければ…っ!」

豹の少年がそこまで言うと、その男はひらりとマントを翻し、そいつのほうを向いた。

「お主、久しぶりでござるな…」

豹の少年はその男の異様なまでのオーラに気が付き、驚いた。サルの少年もそれで目が覚めたようであり、驚きの目でその男を見ていた。

「貴様…まさか再び私の前に現れるとは…おのれ…!」

「この二人は一時拙者の弟子であった者達、見捨てるわけにはいかないでござるよ。」

「おのれ貴様!また私の邪魔をするつもりだというのか!」

そういうとそいつは再び剣に紫色の閃光を集め始めた。

「怒るのはいいでござるが、おぬしでは拙者に勝てないでござるよ。」

「キサマァーッ!!」

そいつは以前とは比べ物にならないスピードで白い鎧の男に襲いかかった。

「死ね!お前さえ…いなければ…この世界は私のものなのにィッ!!」

「その考えが間違っているのでござるっ!!」

一筋の光が閃光となって煌いたあと、そいつは地面に伏せていた。

「グウ…おのれ貴様…」

「邪念がこもった剣では、拙者には勝てないでござるよ。」

そういうとその鎧の男は二人のほうへ振り返り、

「さあ、かえるでござるよ。」

「し、しかし…」

「やつはもはやお主たちの敵ではござらん。もう許してやるでござるよ。」

そういわれ、二人は仕方なくその男とともに扉のほうへ歩き出した。
三人が歩き出したとき、そいつが動いた。

「フッ…相変わらず甘いな…貴様さえ、貴様さえいなくなればァッ!!」

そういうとそいつは今までにないスピードで再びその男に襲いかかった。
その速さに豹とサルの少年は振り向くのにやっとだった。しかし、白い鎧の男だけは違った。振り向くと同時に、白い閃光が走った。

「本当に救えないやつでござるな…」

「ぬかせ!貴様さえいなくなればいいのだ!」

「もはや遅いでござるよ…そう、もはや…」

その男がそこまで言うと、そいつの体はばらばらに崩れていった。

「!?」

二人の少年は驚いた。あの一瞬でそんなことが…と。男は改めて言った。

「さあ、かえるでござるよ。」

二人はそれに従い、再び歩き始めた。そして扉を出ようとしたとき、

「ウガ…キサマサエ…オノレ…イナケレバ!」

そういうとそいつは白い鎧の男に頭だけで襲いかかった。

「くっ!そんなになっても私たちを苦しめようとするのか!」

豹の少年が半ば吼えるようにして手に持っていた剣を振り下ろした。
次の瞬間、そいつの頭は真っ二つになっていた。

「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」

「はぁっ、はぁっ、はぁ・・・」

豹の少年は肩で息をしながら、そいつを睨んでいた。しかし、そいつがぴくりとも動かなくなったことを確認すると、その場に力なくすわりこんだ。

「終わったで…ござるな…」


                 数日後…

「もう行ってしまうんですか?」

「拙者は伝説の剣を探して放浪するもの、一所にずっといるわけにはいかんでござるよ。」

「で、では、あと一週間だけでも…私達はまだ、旅をするほどの技量がありません…」

豹の少年も食い下がる。

「あいや、困ったでござるな…拙者、人に教えるほどの技はないでござるよ。」

「しかし…」

「お主たちは十分強くなったでござる、それ以降は自分で自分を磨くでござる。」

豹の少年も、これ以上は無理だとわかり、最後にひとつ約束を思いついた。

「では、次にあった時は戦っていただけませんか?」

「いいでござるよ、拙者も楽しみに待っているでござる。」

別れ際、鎧の男は二人にそれぞれ違った武器を手渡した。豹の少年は槍、サルの少年は短剣が二本だった。
その後二人は鎧の男が何を言っていたか覚えていない。既に二人には旅に対する期待が溢れていた。そして鎧の男は旅立った。二人にはその広く、強い背中が眩しくさえ思えた。

「さて、私たちも旅立つアルヨ〜」

「少しばかり待て、そう慌てる事もないだろう」

豹の少年は母親の毛皮を被った。ここであった悲劇を忘れぬために。あの白い鎧の男との約束を忘れぬために。そして、二人は旅立った…


この後、二人はある王国の王子と夢幻世界で会い、共に冒険することになるのだが、それはまた別のお話。